序章

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「昨日より早くないですか?」 無駄と知りながら、僕は母に訊いてみた 母はクルリと僕に背を向けて一言だけ 「私の気分だ」 予想通りだが予測不能だった 僕一人を残し始まる朝食の祈りを聞きながら、朝陽の射し込むリビングを眺める 「陽当たり良好 ………良すぎだよ」 なんだろう? この切なくなる気持ちは 食卓からは厳かに聞こえて来る母の声 「―――今日も生きる糧を与えられた事に感謝し ――アーメン」 「「――アーメン――」」 なんだろう? この怒りに近い感情は 朝陽を迎え、神に祈る そんな面白おかしいヴァンパイアを僕は望まない 「……塵になれ」 膝を抱え、小さな抵抗として僕は呟く 陽を浴びたら塵になれ 食事には生き血を飲め 気が向いたら変身しろ ブツブツと呟いていると不意に肩を叩かれた 「おはよう コレでコンビニでパンでも買いなさい」 そっと差し出された千円札 「父………有り難う」 銀髪のオールバック 縁無しのメガネが知的な印象を受ける父 いつものスーツ姿がより一層格好良く見えた シルバーアクセサリーショップ その職場でなければもっと尊敬できただろう ――佐久間シズィア 継承遺伝子【ヴァンパイア】
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