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―ガチャ
と、部屋のドアが開く音
毎度、監視カメラでもあるのかというタイミングでやって来るその存在は唯一人
「朝から盛んな事だな」
無論、母だ
入口でドアに寄り掛かりながら、母の殺気に満ちた紅玉の瞳
視線という名の“死線”だ
「ぼ、ぼ、僕は無実だ!」
清美が凍り付いたように動かないせいで、何だか僕が必死で言い逃れしているみたいだ
「確かにお前が組しかれて見えるな……しかし」
母は僕と清美の態勢を見てそう呟く
そしてドアから離れ近づいて来ると、一言だけ付け加えた
「犯人は皆そう言う」
―どごん♪
「げふぅっ!」
母のサッカーボールキックが清美の腹部に突き刺さり、清美はドライブ回転で僕の視界から消えた
可愛らしい打撃音は、早朝なので近所迷惑を考慮したものだ
「ち、違う……清美が、無理矢理…」
僕の声は母に届かない
それは何となく解っていた
「権太……」
母はゆっくりとした動作で僕の襟首を掴み持ち上げる
「あ、足…浮いてます」
僕を猫でも掴むように軽々と持ち上げたまま、母はカーテンを引き窓を開けた
「私は『両成敗』という言葉が好きだ」
「……へ?」
―ポペン
「ぐはぁ!」
きっとそれは、某サッカー漫画の八重歯の素敵な新田君が放つ『隼ボレー』のように華麗なキック
可愛らしい打撃音は…以下略
「ふむ、二階だったな」
そんな言葉が聞こえた気がした土曜日の朝
僕は昇り始めの太陽に向かい
飛んだ
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