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恐怖に縛られ身動き出来ない僕を尻目に、“魔の手”はその奔放さからか行動範囲を拡げてきた 後ろから、前に 「!!!!!」 粟立つ肌が冷や汗で塗り潰されていく 『デンジャーデンジャー』 高鳴る胸の警報器が非常事態だと騒ぎ立てる “魔の手”はスルリと太ももの付け根辺りに出現し、そして僕はその手に釘付けとなった 女性の手だ 細く、見るからにしなやかな指は男性のものではない ―さわさわさわ 「うひっ」 お尻と違い敏感な箇所を撫でられ思わず声が出る そんな僕に“魔の手”の主は、死角を増やす為か体を密着させてきた 後頭部に感じる二つの感触と咳き込みそうな香水の匂い ―そして 「大丈夫…任せて」 耳元で悪魔がそう囁いた時 僕の心は砕け散った ピンポンピンポンピンポン 「降ります!降ります!僕を降ろせぇー!!!」 下車を知らせるボタンを連打しながら半狂乱で喚く僕 騒然となる車内なんて知った事ではなく、人混みを掻き分け運転手へ辿り着く 「貴様!バスを停めろ!早く!」 「え!?アンタ何を言って…」 ―身体に残る感触 ―心に刻まれた恐怖 『痴漢は犯罪です』
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