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紗英は現役の大学生で、小遣い稼ぎにここでアルバイトをしている
父の友人であり、《ミスリル》の専務でもある中村さんの一人娘で、昔は良く一緒に遊んだりもした
「社長?ああ、今は営業に出てるわよ」
スタッフルームに通された僕は、新調したらしい見慣れぬソファーに腰を掛ける
「そうか……で、いつ戻る?」
店内で父の姿見えなかったので訊いてみたが、どうやら入れ違いだったようだ
「営業先の人と昼食を食べに行くって言ってたから、多分2時か3時頃じゃないかな?」
紗英はテーブルにお茶を置き、僕の隣に腰を下ろした
向かいにもソファーはあるぞ
「そんなに待たなければいけないのか…」
痴漢にあった事が悔やまれる
お陰でとんだタイムロスだ
思惑が大きく外れてしまった事で眉間にシワを寄せていると、真横で僕の顔を見つめている紗英に気づく
「ん?なんだ?
ジロジロ見るんじゃない」
おしゃべりな紗英が無言で見つめてくるなんて、あまり心地良いものじゃない
「あっ……うん
変わってないなーっと思って」
紗英と合うのは半年振り
別に何年も会っていない訳ではないが、僕も随分久しぶりにあったような気分でいた
「そうか?
これでも幾多の試練を乗り…」
「身長がね」
言うとは思ったが言わないで欲しかった
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