398人が本棚に入れています
本棚に追加
/344ページ
「でも社長に用事って、そんな急ぎなら電話でいいんじゃない?」
僕の急な訪問を不思議に感じたのか紗英が訊いてくる
確かに親子である僕が、わざわざ勤務先まで来るような用件なんてそうあるだろうか
まぁ、疑問を感じて当然だ
「お前には関係無い」
嫌がらせで言った訳でも邪険にした訳でもない
だがそんな何気ない一言が紗英の《お姉さん心》に火を着けた
「ふーん、権ちゃんは私にそういう事言うんだ」
あ、マズイ…
「私は権ちゃんの為なら何だってするよ?」
さっきまで10数㎝あった距離がいつの間にか0になっている
紗英の手が僕の後頭部を通り過ぎ頬に触れ、紗英の顎は僕の額に触れる
はい、目の前は胸です
「近い…近いから…」
あからさまの色仕掛けに心拍数は右肩上がりに上昇中
そんな僕にトドメと言える一言
「『関係無い』……か
じゃ、関係を作っちゃおっか」
Yシャツ越しでもハッキリと分かるボリュームに、紗英は手で僕の顔を押し込む
「なっ!?――む、むうぅ!」
い、息が!
今は生き血より酸素が欲しい!
「権ちゃんの“初めて”貰ってもいいかな?」
艶っぽく囁く紗英
その“初めて”って僕の《命》じゃないだろうか
最初のコメントを投稿しよう!