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続々と朝食を終え、各々行動を起こす前に、我が家ではしなければいけない事がある
それは職場へ向かう父の見送り
「行ってらっしゃい」
この時の母は聖母もかくやという笑顔を見せる
モナリザもびっくりだ
「行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい旦那様」
僕と清美もしっかりと見送りを済ませ、父は「行ってきます」とドアを閉めた
―ガチャ
ドアが閉まる音と同時に、母が清美を睨む
「清美、おじぎの角度…
なんだあの完成度は」
―ビクン!
清美が母の声に大きく身体を震わせた
いや、完成度って…
「も、申し訳ございません!」
母は父にベタ惚れだ
僅かな事であっても礼を欠く事は許さない
「洗濯物、シィーちゃんのモノには触るなよ」
『シィーちゃん』『リーちゃん』と呼び合う親って微妙だ
プルプルと震えている清美をスルーしながら僕はリビングに戻る
登校にはまだ時間がある
しかし空腹の僕はせめて何か口にせねばと冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注ぐ
高校2年生
17歳の僕の身長は144.1㎝
去年から1㎜しか伸びてない
ガンダーラにあるのかな……
成長期って
希望を捨てない僕は毎日牛乳を飲んでいる
ソファの前にあるテーブルにコップを置き、腰を下ろすと一人の老人がいた
「無駄な事を…」
薄い銀髪を気合いで7:3にした老人がポツリと呟いた
――佐久間 滋夫(サクマシゲオ)
継承遺伝子【ヴァンパイア】
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