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―ガラガラ
「いらっしゃいませ」
気の進まないまま店内に入ると、そこはあの看板からは想像できないものだった
「2名様で宜しいですか?」
まるでファミレス
「はい、カップル席で♪」
「違う…」
「そんなのありません」
僕のツッコミよりも店員さんの方が早かった
―やるじゃないか店員
じゃなくて
思ったより普通の店内に、幾分緊張が解れた僕
週末の昼時にしては閑散とした店内に不安が残るが、とりあえず案内されるままに席に着く
そして紗英が一言
「じゃあ『沸騰しちゃえイエスタデイ』二つで」
「なっ!?沸…イエスタデイ?」
なんだそのメニュー
品名から何も導き出せないまま店員は復唱して去って行く
「おい、一体僕に何を食べさせる気だ?」
メニュー表も見当たらず、得体の知れない“何か”に恐怖心が募る
「“何”ってシチューよ?」
紗英は当たり前のように言う
「シチュー……なのか?」
いや待て僕
あんな看板の店が普通のシチューを出す筈がないじゃないか
加えて紗英のチョイスだ
これでただのシチューが出てくるなら、僕は今まで苦労していない
――そして数分後
運命の瞬間が訪れる
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