紗英とランチ

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「お待たせ致しました」 ―トン 店員が紗英の言う“シチュー”をテーブルに置いた おおぅ…… それは石焼き用の器に入った血のように赤い液体 それはまるで【地獄の釜】 《具》は底に沈んでいるのか姿は見えず、赤一色に染まった容器の中は【死海】と呼んでも良いだろう 「ではごゆっくり…」 「できるか!!」 思わず店員に突っ込む僕 あの看板にこの色……間違いなく“辛い”だろう 「アレ?権ちゃんって辛いの苦手だっけ?」 僕の慌てぶりに紗英がからかうように訊いてくる この僕を子供扱いとはな 「お前はヴァンパイアと言うものが解っていない」 スプーンを掴み、挑発的な笑みを浮かべる紗英を睨みつける そして視線を赤いシチューへと移した 『沸騰しちゃえイエスタデイ』 怖くないと言えば嘘になる 辛いのが得意な訳ではない ―だがしかし! ヴァンパイアとは氷の能面と鋼の精神が入り乱れて、その…アレだ、なんかいい案配に混ざって……もういい!食べる! シチューをすくい口に運ぶ パクリ ―タラリ ―タラタラタラ ―ダラダラダラダラダラダラダラダラ かっっらぁーーーい
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