紗英とランチ

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―――――――――― 「有り難うございました~」 ―ポロポロポロポロ 昼食を食べ終えた僕達は、店員の間延びした声を背に店を出た ―ポロポロポロポロ 《二度と来るか》 そんなタイトルの感想文を今なら書けそうな気がする 何が『イエスタデイ』だ おととい来やがれ きっとそんな出だしだ 「ねー、謝るから泣かないで? そんなに辛かった?」 ―ポロポロポロポロ 悔しい…… キメ台詞もまともに言えないなんて… 汗は引いたが今度は涙が頬を濡らし、伝う 紗英の“奢り”で良い思い出なんて無いと知っていたのにこの様だ 「ごめんってばぁ、ね?」 敗者に慰めの言葉は存在しない ―プイッ 「ああ!本格的に拗ねた!権ちゃんが拗ねた!」 そっぽを向いた僕に紗英が騒ぐ 恥ずかしいから『拗ねた』を連呼しないで欲しいが… 口が麻痺してしゃべれないの! 「やっぱり怒ってる?」 身体に異変が起こってる 紗英が何も喋らない僕を不安そうに覗き込んでくる 喉元過ぎても辛さは抜けないが、怒りと呼べる感情はもういない 僕は回らない舌の代わりに、自分の口を指差した ビリビリとまだ痺れる口 腫れてないといいけど…… 「ああ!そういう事ね!」 そういう事だ お前の悪戯心が招いた… ――チュッ ……ん? ――んんっ!!? 「キスしたら許すだなんて… もう!権ちゃんって意外とS…」 「そんなワケないだろ!!」 あ、治った
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