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お昼ともなれば街は混雑の盛り
紗英の不意打ちは通り過ぎる筈だった人達の足を止めた
勿論見られてる
―白昼堂々
お日様も高いうちから唇重ねてれば当然だ
いや、高い低いの問題じゃなくて互いの気持ちが大切なワケで人前でそんな…
「ほら、そんなボーッとしてないで…あ!バスが来たよ!」
気が付けば見覚えのあるバス停が前方に見え、緑色のバスが停車しようとしている
「あ、うん」
タイミング良く現れた帰りのバス
一時間に二本は出ているので乗り過ごしてもそれほど問題はないが、直ぐに乗れるのを見過ごす理由もない
「ほら!走って!」
紗英が僕の手を握り駆け出す
「お、おい!引っ張るな!」
肩が抜けそうな勢いで手を引かれ、五、六人並んでいるバス停へと突入した
「久しぶりに会えて嬉しかったよ権ちゃん」
満面の笑顔で紗英が言う
こういう素直さは紗英の魅力であり、好ましい部分だ
「ああ、僕もだ」
少し照れ臭いが、幼馴染みに会って嫌な気はしない
バスの乗り口に入り、振り返って紗英にそう返すと、自動ドアが閉まる
――その間際
「楽しんでね♪修学旅行」
「……あ」
プシュー
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