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あの女
事の重大さを知った上で母に話したな…
「確かに子の修学旅行に着いて行くようで恥ずかしいとは思う…しかし、親子が同じ場所にいることがそんなにいけない事か?」
一見、悲しみを全面に見せてはいるが、そんな性格ではないことを僕は知っている
「いえ、素晴らしい事だと…」
「良く言った
因みに宿泊先は先程校長に頼んだから同じ宿だ」
同じ?
いや、何故校長がそんな旅行会社紛いな事を…
「あのー……、母?」
「同じ土地、同じ屋根の下
――何か不満があるなら言ってみろ」
お前の態度だ
などとは言える筈もない
いや、もう僕が言える言葉など端から一つだけだったのかも知れない
「た、楽しみだね」
「うむ、そうだな」
円満解決
その輪の中に僕はいないけどね
僕だけが全てを飲み込めば、平和な家庭でいられる
そう、思っていた
「えーと………私は?」
リビングのドアから顔だけを出していた清美が遠慮勝ちに声を出した
それはまるで捨て犬のように
何かを欲し、何かを訴え、何かを求めるように僕と母に向けられる
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