序章

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銀色の檻の中には……最近では《ケージ》と言うらしいが、その中には一匹の獣の姿がある 白と黄色の体毛に包まれたソレは、僕の持つ餌を前にヨダレを流し…もとい、鼻をヒクヒクとさせている それに合わせ長く伸びた髭もピクピクと動き、円らな瞳がなんとも―― 「…癒されるぞ、梅吉」 ――沢木 梅吉(サワキウメキチ) タイプ【ハムスター♂】 一応ね、一応…… ひまわりの種をテンポ良く口に詰め込む梅吉に癒されるながら、今度は隣の水槽を見る 飾り気の無い水槽の中には、昨年より一回り大きくなった使い魔の姿 赤い鱗をくねらせ優雅に泳ぎ、餌はまだかと口をパクパクさせている 「今の気候は過ごしやすいだろう?竹吉」 ――沢木 竹吉(サワキタケヨシ) タイプ【フナ金魚】 た、大切な存在なのだ! 梅吉は2代目、竹吉は若頭的存在だ 初代のジャンガリアンハムスター松吉(ショウキチ)は、2年前の冬に冬眠から目覚めずに亡くなった 梅吉は1歳と半年を過ぎ、人で言うなら初老を迎えた頃だろう 食欲も旺盛で良く動く しかし衰える時は一気に衰弱してしまう生き物だけに、今年の冬は気をつけねばならない 「長生き、するのだぞ」 餌を机に戻し、壁掛けの時計を見る 時計の針はいつの間にか 『学校行ったら?』 という時間になっていた
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