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「ま、自由行動の時にでも合流しようぜ」
「陽子
俺の分のおやつも頼む」
公園前のいつもの交差点で別れる大作とキリト
「おやつくらい稲穂ちゃんにお願いしなさいよ」
キリトの厳しい台所事情を知りながら、嫌味のつもりで返す陽子
「…それは言わない約束だ」
効果は抜群だったようだ
「Sタイプのキリトは同じSタイプの我がスィートシスターとの相性が悪いんだ」
お前は何のブリーダーだ?
大作の説明を聞き流し、僕は「じゃあな」と手を上げて歩き出す
落ちかけの陽が正面から差し、それを愛用の日傘で遮り足元を見ながら歩くと、公園を横切って帰る筈の陽子の足が見えた
「ねぇ、ちょっとブランコに乗ろうよ」
日傘で顔は見えないが、その声にはいつものふざけた感じが無かった
「ふん、子供かお前は」
と、言いながらも僕は公園へと歩みを変えた
陽子の態度が気になった訳では無く、ただ単にブランコが好きなだけだ
………本当だぞ?
公園の中央には二つのブランコがあり、一つは陽子が、もう一つに僕が座る
「なんか懐かしいね」
陽子が言う
「そうか?」
僕が返す
忘れてはいない
初めて陽子と出会った場所だ
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