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暮れかけの景色はまだ明るく、公園から家までの道を陽子の言葉を反芻しながら歩く
「楽しい修学旅行か……ん?」
家の前の通りに出ると、特徴のある黒い帽子を被った少女が――
「何故に屈伸運動?」
間違いなく晴香である少女が、間違いなく体をほぐしている
リュックを背負ってだ
何だか声をかけるのも恐い感じがするが、ご近所様であり友人でもある晴香を無視するわけにはいかない
「おい、キョンシー女」
アキレス腱をグイグイ伸ばしている晴香に声をかける
「…あ……ヴァンパイア…」
帽子からサラリと流れる深い青色の髪が、振り向き様に舞う
「お前、何をする気だ?」
晴香の足元を見ればいつものパンプスではなく、走りやすいスニーカーになっている
そして手元には――
「……秘密」
「N潟、来る気だな?」
晴香の手元には一冊の本
『行ってこい!日本海!』
微妙なタイトルの雑誌がしっかりと抱えられていた
「…ぶらり……一人旅」
目線を斜め下に逸らし、雑誌を裏返す晴香
分りやすいヤツだ
雑誌の裏にはしっかりと
『行ってきます!日本海!』の文字がある
でもまさか、徒歩で行く気じゃないだろうな?
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