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唇に残る温かい感触に、気恥ずかしさと罪悪感に似た感情を覚える
僕は何なんだろう
整理のつかない頭を数回振り、雑念を振り払いながら自宅のドアを開けた
「ただいま」
『お帰り』の声がある筈も無い
それが習慣となっているが、寂しくない訳ではない
―と
「あ……お帰りなさいませ」
くぐもった声ではあるが、間違いなく清美の声だ
我が家の住込み家政婦たる清美の存在を思い出し、声の方へと顔を上げる
まぁ、お前だけでも迎えてくれる人がいれば……
「清美、気でも違えたか?」
違和感だらけの清美の姿に、僕のコメカミは小刻みに痙攣する
「な、何の事でしょう?」
―苦笑い
明らかに“今”見られてしまった事の迂濶さを悔いてる表情だ
「そうか……
どうしても僕に皆まで言わせたいらしいな」
紅玉のような僕の瞳は鋭利な刃と化し清美を突き刺す
「一体…何の事やら…」
既に尋常じゃない発汗作用の働きを示している清美の顔
「ならば問うが……
何故ウチの制服を着ている?」
見慣れた我が校の制服に身を包んだ清美がビクンと体を震わせた
いや、そんなリアクションされてもね…
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