出発前日

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仕方なくリビングのソファに座り、清美がお茶を淹れる姿を眺める 違和感の塊である制服姿の清美は、慣れた手つきで上品に急須を扱う 着物でも着れば様になるものを 普段は露出の激しいメイド服を着ている清美だが、素材が悪くないだけに残念なことだ 「で、訳とやらを聞こうか」 僕とて明日に備えて用意しなければいけない事があるのだ くだらない話しならば蹴り倒してくれる 「先ず、旦那様と奥様はもう発たれました」 「ブフゥー!」 予期せぬ告白に、口に含んだばかりのお茶を吐き出した 「熱い!熱いですご主人様!」 吹き出したお茶をモロに食らった清美が顔を押さえて騒ぐ 「うるさい! そんな事より何で父達がもう出発してるんだよ!」 僕はまだお小遣いをもらってないんだぞ! 「サプライズ?」 「いるかそんなもん!」 パシャ 「熱い!“直”は熱いですご主人様!」 湯飲みに残ったお茶を全て浴びた清美が退け反りながら騒ぐ 「清美、言っておくが僕は今すこぶる機嫌が悪い」 「は、はい」 顔面に手を当てたまま、清美はコクコクと頷く 「お前が制服を着ている訳とは何だ」 眉を吊り上げ、歯をギリギリと鳴らす僕に清美は言った 「修学旅行に潜り込も…」 ―ゲシ 「ぺぎ」 僕の足の裏が、綺麗に清美の顔に埋まった
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