出発前日

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なんか勢いで母からの借金話しを逸らされた気もするが、その『勝負』とやらで小遣いがもらえるならば… 「まぁ、いいや ―で、『勝負』って何でもいいのか?」 何でもいいというならば僕にだって勝機がある 自慢の学力で現役高校生の力を存分に… 「いや、やっぱり儂が決める」 ―なっ!?ズルいぞジジイ! 僕が選んでもいいって感じで話を振っておきながらコノヤロー 「……何で勝負するんだよ」 納得いかないモヤモヤとした気持ちを抱えながら爺ちゃんに訊く 僕に選ばせなかったくらいだ 爺ちゃんが何を得意とするかは知らないが、自分に有利なものを選ぶ大人げないチョイスをする筈だ そういうヤツだ 「あそこ梅の木がある」 爺ちゃんはリビングから見える庭に植えてある梅の木を指差した 「それが?」 あの木で何をするというのだ 「一本だけ長く延びた枝があるのが分かるな?あれに先に触れたほうが勝ちじゃ」 「―んなっ!?」 どうみても僕の身長では届かない高さにある枝 長身の爺ちゃんは思った以上に大人げなかった 「勿論、妨害も自由じゃ どんな手段を使おうが、先に触れた者の勝ちという簡単なものじゃが……どうじゃ?」 どうじゃ?……て その既に勝ち誇った顔がムカつくよ いいだろう 「わかったよ その大人げない勝負に…」 「わ、私もやります!」 存在すら忘れかけていたヤツが参戦を申し出てきた
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