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やっぱり爺ちゃんには――
同じヴァンパイア
不意打ちというにはお粗末だった事は否めない
――ならば
僅か先に見える爺ちゃんの背中
「飛べ!」
僕は漆黒の棒を宙に放り、爺ちゃんの背中めがけ手を突き出す
―ヴゥゥン……シュン!
一本の棒は十数の小さな“礫”へと形を変え、爺ちゃん向かって高速で飛び出す
殺傷能力は無いに等しいが、バランスを崩す事くらいは――
「稚拙じゃな」
前を向いたままの爺ちゃんの背後に、突如として闇の壁が現れた
そんな馬鹿な!
なんで予備動作も無しで……
僕の作り出した“礫”は、前触れなく現れた壁にぶつかり爺ちゃんに届く事はなかった
「年期が違うわい」
打つ手を無くした僕に、爺ちゃんが勝利を確信したように一度だけ振り向いて見せた
しかしこの動作が
爺ちゃんの見せてはいけない隙だった
「アヴサム・ディ・ロイ
涅槃の淵より還りし対価を今この刻この地に収め出よ」
―死霊術師
失念していた訳では無い
しかし、その術を今使うなど誰が予想できただろうか
「一体何を…」
清美は屍を扱う
魂を与え、奪う禁断の術
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