出発前日

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「清美、お前…」 “あの日”以来使っていないだろう死霊術 「何でもアリ…ですよね?」 這いつくばった格好のまま、清美が唇の端を上げた 何が現れるのか分からないが、過去に体験した恐怖が脳裏によぎる あんな化物が出てくるんじゃないだろうな… そんな予感に身体を膠着させていると、爺ちゃんの斜め上に出現した物体 ―あれか! 「ん?」 気配を感じとったのか、爺ちゃんがその物体へと顔を向ける しかし、こっちに注意を向けていた分、その反応は若干遅く― 「ニ゙ャン!」 ―ベキッ!! 「ベフゥ」 不意に現れた黒い影の一撃が、爺ちゃんの顔を打ち下ろした 地面を数バウンドした爺ちゃんは庭石にいたたまれない音を放ち激突 完全に沈黙した 「あ、あれは……」 黒い物体は空中で華麗に身を反転させ、軽やかに地面へと着地した 四つ足で 「どうですか?近所で車にひかれた哀れな猫を…」 「埋葬しろ」 ―ゴス 「べひっ」 清美の頭を踏みつけ、これで僕の邪魔をする者はいなくなった 筈だった 「フゥゥー!!」 尻尾を太くした黒い猫が、威嚇しながら僕の前に立ち塞がる おのれ……猫の分際で
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