序章

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自宅から徒歩で15分程度の距離にある高校 家から近いと言う理由で通う生徒も多く、僕もその一人だ その制服を来ている者の中で一際小さく、日傘を差す僕は目立つらしく、良く近所の人達に声をかけられる 「お!ヴァンパイア君じゃないか、おはよう!」 「あらぁ、吸血鬼の坊や…日焼けしないようにねー」 見よ、この知名度を! 自ら広めて歩いたとは言え、こんなにも気軽に声を掛けてもらって…… アレ?あんまり嬉しくないや こう、もっと威厳というか…その…恐怖というか…… まぁ、いいや 学校へ向かう途中に小さな公園がある 春には見事な桜が咲き並ぶ所だが、今は少し寂しく秋の訪れを見せていた 道路にはみ出した桜の枝 かつては僕の“目標と言うべき枝”があったが、今は鋭利な切口を残したまま、手の届かない所で僕を見下ろしている 「あれから1年経つのか…」 何となく足を止め、何となく上を見上げる まるでそこに昨年の夏が浮かんでいるような、そんな感覚に陥りそうになる ――と 「おーい、1㎜くん 随分と健全な成長してるわね」 現れたな…魔女め 「僕はタバコではないぞ」 頬が引きつるのを感じながら振り返るそこには意地悪い笑みを浮かべる女 ――高山 陽子(タカヤマヨウコ) 継承遺伝子【Aカップ】
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