出発前日

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猫科である猛獣 ライオンや虎を相手にするわけではない 猫科の猫だ 「僕も舐められたものだな…」 ゆっくりとした足取りで、やや小太りの黒猫へと近づく 「至高の存在たるヴァンパイアが死にぞこないなんぞに負けるか」 見れば見るほど可愛いげの無い猫だ 腹はたるみ尻尾は太く短い 身を包む毛に艶は無く、眼光だけがギラギラと威圧的に僕へと向けられている なんかムカつく しかし動物愛護の精神を貫く僕は、蹴りの一発で許してやる事にした 「逃げるなら今のうちだぞ」 徐々に歩く速度を緩め、艶の無い毛を必死に逆立てる黒猫を睨む 「フシュルルル!」 黒猫は怯むどころか身を屈め、今にも飛びついてきそうな勢いだ 「道を譲れ …後で煮干しでもやるから」 怖くはないんだ… ただ、爺ちゃんに放った前足の一撃がちょっと普通じゃなかったから… 「や、焼き魚がいいか?」 僕の足は完全に止まった 「フシャァァア!!」 黒猫は大きく口を開き、重心を僅かに下げ“タメ”を作った ――来る!! 咄嗟に腰を落とし身構える ――タン! 四つ足で地を蹴り、黒猫が僕の足元へ一直線に向かって来る
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