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 両手をついて倒れていた女は、ガバッと起き上がり、洋服についた汚れをパタパタと払いながら、辺りをキョロキョロ見回した。  ぷっ、動物みてぇ。  と、その時女と目が合った。  童顔で、可愛らしい顔の作りに、くりくりとした大きな瞳。    ふっくらとした柔らかそうな唇。  俺に見られていたのがわかったのか、ほんのり頬を赤く染めて、俺を見つめながら目を細めて、『しぃーっ』と人差し指をその唇に当てた。  そして、何事もなかったかのように踵を返し、校舎へと入っていった。  その様子を、なぜか俺は身動きも出来ずにただ、突っ立って見ていた。
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