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そこは、かつて王子が助けられた浜。
流れついた船の残骸を見て、皆は悟った。
これだけ酷ければ、奇跡など起り得ないだろう、と。
太陽が一番高くなる頃、残骸の中から、王子と姫の遺体が見つかった。
姫は、人形のように優しい微笑みのまま、亡くなっていた・・・いや、その微笑みは晴れやかで、生前より美しいものであった。
王子の方は、いたるところにぶつけたのであろう、顔は残念ながら確認出来たものではなかったが、王子の証である勲章の下に、深々とナイフが突き刺さっていた。
それは、見事な装飾のナイフで、何処の国でもみた事のない不思議な輝きの金属で出来ていた。
嵐の後の眩しい日差しが、ナイフにぶつかり、無邪気に七色のスペクトルを見せる。
何が起きたのか誰にも分からないのを嘲笑うかのように。
とあるところに、かなうはずもない恋をした人魚の姫がおりました・・・。
とあるところに、想像の姫を愛した王子がおりました・・・。
そして、とあるところに、秘密に翻弄され、魅了された姫がおりました・・・。
ただ、月と海だけが、真実をみておりました・・・。
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