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とある国の王子が、隣国の姫と豪華な船上結婚式を挙げた夜、人魚姫はその身を海にゆだね、泡となって消えた。
その頃姫は、王子に抱かれながら、優しく微笑んでいた。
『あの嵐の後、僕を助けてくれた女性と結婚するんだ。僕が目をさますまでそばにいてくれた、あの優しい女性と。』
王子様、それは私です!
貴方を助けたのは、私なのです・・・!
人魚姫の発する事の出来ない声も、泡となって消えた。
王子様、わたくしは偶然通りかかっただけ。
貴方を助けてなどいないのです・・・。
隣国の姫の言葉もまた、微笑の中に消えた。
波の音が響く。
それはまるで月のすすり泣く声。
漆黒の海は、すべての涙を受け入れ、冷たく揺らめいていた。
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