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船上の日の出、その光かの名だたる剣より鋭く。
人魚姫が居なくなった事に気付いた者らの慌てふためきを、長い影を付けながら、照らしていた。
早朝の知らせに、王子も驚き、悲しみ、そして、傍らの姫を抱いて言った。
「君は居なくならないでおくれ。僕を救ってくれた君。君が居ないと僕は駄目になってしまうよ。」
王子の思考からも、人魚姫は消えてしまっていた。
「僕の命は君に助けられたんだ」「君のお陰なんだ」「君の優しさは女神のようだった」などと、王子は姫を愛でてならない。
姫も微笑みでその愛を受け止める。
王子の瞳は、誠心誠意尽くして彼を救った姫へと向けられ、そらされる事が無かった。
しかし、姫には真実が見えていた。
『王子様は、‘王子を救った’わたくしを愛してる。』
『いいえ、わたくしではない。‘王子を救った女性’を夢見ていらっしゃる・・・。』
姫は、微笑んでいた。
それでも、王子から愛されてる事にはかわりないし、自身も王子を愛しているのだから。
姫は真実を飲み込んで、微笑んでいた。
幸せな結婚のために。
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