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国に戻ってからも、王子は毎日、いや、四六時中、姫を称賛し続けていた。
嫌というほど聞かされる王や家臣達は、苦笑する他ない。
そんな王子に、姫は変わらず優しく微笑むのだが、少しずつ、その表情に変化が見られ始めた。
『もし・・・わたくしが助けたのではないと知られたら・・・』
王子は、国中に姫との出会いを自慢している。
『もし・・・わたくしが助けたのではないと知られたら・・・』
周辺の国にも、二人の出会いの美談は広まり、王子は姫の素晴らしさに鼻を高くしている。
『もし・・・わたくしが助けたのではないと知られたら・・・、王子は・・・。』
王子が姫を讃えれば讃えるほど、姫は不安になってきた。
美しい姫の憂う姿は、多くの家臣に目撃され、噂されていたが、残念ながら、‘自分を助けた姫’が好きな王子は、彼女の悩みに気付く事はなかった。
幸せな結婚は、少しずつ狂いはじめていた。
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