1人が本棚に入れています
本棚に追加
ここ、輪嘉幼稚園には変わった子供が役一名いた。
その子供の名前は蝶。
みんなからはフルネームで華蝶と呼ばれている。
普段は口の悪い男の子なのだが、ある男の子の前では大人しくきれいな敬語を使う。
「はぁ?うっさいブラコン!光夜様はおれのなんだよ!!」
自分より背の高い相手を睨みつける華蝶。
相手は華蝶の大好きな光夜の兄――明光。
「はっ!残念だったな。光夜は俺のことが大っ好きなんだよ」
「光夜はおれが、だいっすきなんだ!」
小学生と幼稚園児の喧嘩に、先生たちは苦笑。
2人の喧嘩を止めれるのは
「あ、かちょーと明光おにーちゃんだぁ!!」
天使の様な笑みを浮かべる光夜のみ。
華蝶は光夜の声が聞こえた瞬間、明光との喧嘩を止めて姿勢を正してにっこりと笑う。
「二重人格」
聞こえた明光の言葉に眉をわずかに寄せるが、すぐに笑みを深くする。
「かちょー!」
ぎゅーと抱きついてくる光夜に、華蝶は優しく頭を撫でた。
「はい、なんですか?」
先ほどまでの口調とは百八十度違う言葉遣いに明光は頬をひきつらせた。
華蝶はいつも光夜を見ると敬語を使い大人しくなる。
理由を聞けば、「光夜様の執事だからです」と答えていたが、実際は普段の口調だと光夜に嫌われるから、だろうと推測していたり。
好きな子に嫌われたくないという理由で敬語を使うのはまだ可愛いらしいが、ここまで行くと「本当は二重人格じゃないのか?」と思いたくなるのと同時に、余裕で豹変して敬語を使う華蝶は可愛いくないと思ってしまう。
だが
「ね、かちょー、いっしょにごはんたべよ!」
可愛い弟の夕飯の誘いに嬉しそうに笑う華蝶に、やっぱり可愛いと思ってしまった―――。
最初のコメントを投稿しよう!