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『こーねぇ、おーきくなったら、にぃとけっこんしゅるの♪』
カメラに向かいながらにぱぁ~!と笑っている、ピンクのワンピースを着ているのは間違いなく俺で、思わず固まった。
『克那だいすきっ!』
『えへへー♪』
光夜にぃに甘える俺自身を見て、恐る恐る光夜にぃを見た。
「克那」
「な、なんだよ」
真剣な声色に、俺は思わず身構える。
「お前、この年から女装好きだったのか?」
「違うに決まってるだろ!!」
きっぱりと言い切る。
この年で女装好きだとしたら、いくら自分でも流石に引く。
『にぃーちゅー♪』
『はいはい♪』
「「は??」」
テレビから流れた発言に、今度は2人して固まった。
――ちゅ。
画面に映る光夜にぃは、画面に映る俺の頬に可愛いらしいキスをした。
「おや、懐かしいね」
落ち着いた物腰や柔らかい口調に、俺と光夜にぃは振り返る。
「「母さん!」」
母さんが懐かしそうに笑いながら、後ろに立っていた。
「母さん、なんで俺が女物着てるんだ?」
親バカな母さんの事だから、絶対に母さんが着せたに違いない―――と、思っていたが―――。
「違うよ。克那が女物の服を見て『これが着たい』と言ってね」
「え」
「ほら」と言いながらリモコンを弄り、違う映像にする母さん。
『かあしゃん、これかわいい!おれ、これがいーい!!』
『ふふっ。じゃぁ、違うのも見ようか』
『うん!あ、このピンクのかわいい~!!』
とてとてと走り手にしたのは、なんとロリータ。
小さい俺は上機嫌に笑っていて、母さんも嬉しそうにしている。
「母さん、普通言わないか?」
光夜にぃが頬を引きつらせて母さんに言う。
だが母さんは頬を緩ませながら
「何を言ってるんだい?可愛い息子が可愛い服を着るのだよ?」
「「……」」
母さんは絶句した俺たちなんて気にせずに、ホームビデオを見続けている。
「なぁ光夜にぃ」
「ん?」
「女装平気になったのって……」
「母さんのせいだな」
俺と光夜にぃは小さくため息をつき、もうホームビデオは見ないでおこうと思った―――。
END
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