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ボロく穴の空いたフェンスに手をかけたその時。
「こんな所で何してるの?」
真上から声が聞こえる。幻聴?驚き振り向くと給水タンクの上に誰かが座っていた。
「あなたこそ何してるの?」
彼は月の逆光で見えにくい長い筒状を指差した。
「星を見てるんだ。」
登っておいでよ、と言われ近くまで行ってみると、望遠鏡、コンパス、星座板などが青いシートの上に置かれている。
「今夜は雲もないし、夏の大三角がよく見えるから。」
嬉しそうに彼は説明をしてくれる。
「で、君は?」
不意に彼は私の瞳を覗きこんだ。まるで全てを見透かすように。
「その…………。」
とても本当の事は言えない。
「まぁ、人それぞれだし。答えたくないならいいよ。」
彼はニコッと笑った。
「良かったらさ、少し見ていかない?」
彼はリュックからお菓子や缶コーヒーを取り出した。唖然としている私に用意がいいだろ、と得意そうに言った。
なんでだろう…………久しぶりに楽に笑えたような気がした。
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