侍立異端

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まぁ、この際それはいいとして…桃香や愛紗達は史実通りなら、この乱世を正すために立ち上がるはずだ。   ならば俺や我導の行くべき道は既に決まっているよな。   「俺はこの世界に詳しくわけじゃないからな…どうしたものか…桃香達は、もうすべき事を決めているんじゃないのか?」   俺の質問に対してえへへ、と照れたように笑う桃香が立ち上がると表情を真剣なものへと変えた。   「私達は…今、この国で怯えてる弱い人を…泣いている人達を救いたい、そう思って立ち上がりました…」   やはり、案の定の答えが返って来たが…それでも、例えそれが史実として既に知っている内容であっても聞かずにはいられない…そんな不思議な迫力を感じた。   「最初は盗賊を追い払ったり…行く先々で人を助けたり手伝ったり…それでもいいと、少しでも世の中が平和になって皆の笑顔を取り戻せるなら…そう思って頑張って来ました」   そこで俯いた桃香を優しく支える様に、愛紗が桃香の傍らに立って話を続ける。   「しかし…それでは本当に皆が笑顔で平和に生きていく世界を望めないのだと、知ってしまった…私達は弱く、小さかったのです…」   ふむ…と呟き、我導が壁にもたれ掛かる、この男も伊達に魔物という訳ではない、永く生き、見てきているからこそ彼女達の苦悩がわかる。   現実と理想の間にある、埋めがたい溝を。
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