侍、桃園で契る

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村の復興を手伝い始めて早一週間が過ぎていた。   桃香達のやりたい事は分かった、行動しなければ前に進めない事も分かる…十分過ぎる程に…   「参ったなぁ…」   見ていた景色から目を逸らして大の字に寝そべる、はっきり言うと…手詰まりだった。   この辺りの盗賊を相手に村を警護していた俺達だが、旅の商人の話しでは既にこの辺りの盗賊達は他の地域に逃げ出してしまったというのだ。   理由は簡単だ、我導がやりすぎたからだ…散発的に攻めてくる盗賊達に対して、俺達を無視して我導は単騎で突撃、全員を生かしたまま捕らえて戻ってくると直ぐに何人かを逃がし…その拠点を突き止めては撃破する、という行為を繰り返したのだ。   「何してんだよ、一刀」   「んー、お前がやりすぎなければもうちょっと路銀を稼ぎ易かったかも…て考えてたんだよ」   起き上がった俺に「ぬかせ、被害が広がるよりはいいじゃねえか」と言い放って腰を下ろす。   そりゃまぁ、そうだけど…   「ふう、まぁいいか…今後はもう少し俺達にも手伝わせろ、お前の名前が目立ってどうする」   「それもそうだな…っと?」   俺が投げた書簡を受け止めた我導が書簡に目を落とす。 その後ろで丁度よく桃香達も休憩に入るらしく、手を振ってこちらにやって来る姿が見えた。   「ご主人様達も休憩?」   「そんなところだ」   サボってましたとは…言えない。   「丁度良いときに来たな、ホレ」   我導が読み終えた書簡を桃香に放ってニヤリと笑う。   「桃香、一刀もただサボっていた訳じゃなさそうだぜ」   バラすなよ…と言いかけた俺に、愛紗がわざとらしい咳払いと一緒にジト目で此方を見る。   はい…ごめんなさい。   「まったく…ご主人様も桃香様も、もう少し人の上に立つ者の自覚を…」   「そんな事よりお姉ちゃん、何て書いてあるのだ?」   愛紗の小言を遮って鈴々が桃香の袖を引っ張る。   「あ、うーんとね…河北の方で大規模な盗賊を討伐する義勇兵を募集してるみたい、えーと募集してる代表は公孫讃…って、白蓮ちゃん!?」   桃香の口から知らない人の名前が飛び出しす、素っ頓狂な声をあげて書面を読み返す。   「ご主人様、ここに行こう!!」   「河北とかいう所へ?」   桃香はただ公孫讃だか白蓮だかいう人物を助けたいのだろうが、俺としてはこれは好機と見ていた。
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