侍立異端

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「何処とは…北郷殿は、その…」   その、うわぁ…て顔はやめてほしい。   「気が触れたわけじゃないし、変な病気もかかってないから安心してくれ…ただ今までとは全く、そう、別の世界といっても過言ではない場所に突然放り出されたようで…」   自分で言いながら頭がおかしくなったのかと誤解されてしまう言い訳だが…事実だから仕方ない。   しかし趙子龍と名乗った少女は腕組みをして思案顔になる、何か俺の発言にひっかかる所があったのだろうか?   「まさか…しかしあれは眉唾ものの噂に過ぎん…だが…」   「趙子龍殿、何か知っているのなら教えて欲しい、こっちとしては右も左も分からない土地…としか言いようが無い」   「趙雲で良い、我が名は趙雲、字は子龍…すまぬがわたしでは北郷殿の手助けになりそうに無い、せいぜいこの近くの邑を教えてやるくらいだが…」   「村があるのか?ならばそこで情報を集めるとしよう、して、その村はいずこに?」   趙雲の武人とはとても思えないほどの華奢な指が、ある方向を指し示す。   「この道を真っ直ぐ行けば小さな邑が見えて来るはずだ、この時間ならば恐らく夕刻までには着けるだろう」   「かたじけない、趙雲殿」   頭を下げた俺に、趙雲は笑って頷く。   「これも何かの縁、気になさるな…では私はこれにて…縁があればまた会うことになろう、さらばだ北郷殿」   むう、趙雲殿には悪いが女性とは思えぬ程に見事なまでの武人っぷり…だが見た目はどう見ても少…いや、美少女か。   それはともかく、趙雲の姿が見えなくなった後、俺も趙雲に教えて貰った村への道を進む事にした。
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