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百や二百の雑兵に後れをとる程弱くはない、しかしそれだけでは守れない。
ぼやけていく視界に大挙する盗賊達の姿を辛うじて捉える、同時に自分を切り替える。
私に泣いている暇はないのだ、私は弱き民の盾…泣きはしない、私が…私達が諦める訳には…
「諦める訳にはいかんのだぁぁぁぁ!!」
「その威勢、見事成!」
覚悟が言葉へと変わった瞬間、愛紗の横をすり抜けて疾走する影が盗賊達と激突する。
その一瞬で愛紗の前に少なくとも十人はいただろう盗賊達が裂斬されていた。
「侍、北郷一刀…そこな勇将に加勢いたす!!」
一気呵成、疾風迅雷の如く、愛紗の前に現れた北郷という男が再び盗賊達へ向かって疾走する、残像さえ見える速さで間合いを詰めると次々に盗賊達を斬り伏せていく。
全てがその男の名の通りに一刀にて斬り捨てられていく、盗賊達にも何が起きたか分からない間にみるみる屍の山を築き上げていく男はさながら鬼神の姿を思わせた。
「愛紗ー!返事するのだー!!」
砂煙を上げて向かって来るのは義妹の鈴々だった。
「こっちは終わったのだ、後一息で…て、愛紗はもうこんなにやっつけちゃったのだ?」
あれだけの勢いで走って来ながら息も切らさずに愛紗の服の袖を引っ張る鈴々が指をさしたのは、北郷一刀が築き上げた屍の山だった。
無論愛紗が倒した者達もかなりの数ではあるが、うず高く積み上げられた人の山は間違いなく今も戦っている男の業だった。
「加勢してくれた方が今も戦っているんだ、我らもこれに続いて盗賊共を追い払うんだ!!」
「合点!!」![image=454616633.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/454616633.jpg?width=800&format=jpg)
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