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「真名というのは、その者の本質を表す神聖な名です…家族や、心を許した者でなければ例え知っていても呼んではならないものなんです」
ふむ、そうなのか。納得する俺の横に縛り上げた盗賊達を投げ捨てて、腰を下ろした我導も納得したように頷いた。
「あ、ご主人様達は私の事、真名で呼んで下さいね♪」
「達?俺も?…俺は別に三人にそこまで心服させる事はしてないが…いいのか」
「桃香が良いと言うんならいいんじゃないのか?」
猫か犬の様に鈴…もとい張飛をあやしていた我導がそっかーと言って桃香の頭もワシワシと撫でる。
「私は姓は関、名は羽、字は雲長…真名は愛紗です、ご主人様」
「鈴々は張飛で真名は、鈴々なのだ!!」
我導の膝の上で手足をパタパタさせながら鈴々が元気よく声をあげる、ついつい頬が緩むな。
「俺も我導も真名も字もないし…強いていうなら俺は一刀が真名で、我導は我導が真名…かな」
「だな、よろしく頼む」
互いの自己紹介が済んだ所に村の人達が顔を出す、その表情は感謝に満ちていた…
…夜、宿を勧められた俺達は今後どうするのかという事について話し合う事にした。
「一刀はどうする?」
「この世界…については我導や愛紗にだいたい説明されたけど…どうしたものかな?」
我導曰わく、この世界は俺のいた世界とは異なる歴史を持つ外史という世界らしい。
だからなのかは定かじゃないが、歴史小説に登場する英傑が女性になっている。
その辺りは我導ほどの魔物でも分からないそうだ…ん?
我導は人じゃないのか?そりゃ、見た目は人だが…我導自身が人じゃないと言ってるし…何よりも、俺のいた世界では我導という名は妖を統べる隻腕の魔神という昔話になっている程だからな。
その事実を知っているのは…この世界だと多分俺と我導だけなんだがな。
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