序章  息苦しい夜は

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渋谷発の終電は、信じられないほど混み合っていた。人生初の合コンですっかり飲みすぎたあたしは、目が回ってフラフラだ。   「大丈夫?」   あたしの横で、今日の合コン参加者だった清水さんが押し潰されそうになっている。正直、二人とも大丈夫じゃない。あたしは苦笑いして首を横に振った。   「背が低いと、息苦しさ倍増…」   身長149センチのあたしがそう言うと、ボクもだよと笑われた。確かに、清水さんも背は低そうだ。しかも童顔で、目を半分隠すような長い前髪が、なおさら子供っぽい印象。合コンの時も、年齢不詳のままだった。あまり喋らない人だったし、帰りの方向が一緒なんて偶然がなかったら、多分一生話すこともなかっただろう。人の事は言えないけれど、とても合コンに来るタイプには見えない。
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