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空は綺麗に晴れているのに、今日はついていなかった。
うっかり溝に落ちて、ようやく這い上がった目の前には、犬のふんがドンと鎮座していた。
なんとも腹立たしく思ったが、慎重にそれを避けて、いつものように餌場に向かう。
この時期は食事には事欠かない。大きい獲物を食らいたいと思いながら、雑草の生い茂る草原を走った。稲穂がさわさわと波打つのを眺めるのは心地良い。
メヒシバが身体を撫でるのを感じながら、カエルの鳴いている水田を目指した。
その水田に行くためには嫌な場所を横切らなければならなかった。
自然を抹殺して作られた、黒くて熱い地面。
そこには死が満ちている。
沢山の生物の死骸や念が渦巻いて、空気が澱んでいるように思えた。
半ばぐらいまで渡った時、嫌な生き物が走って来るのが見えた。
『わ! ヘビ!』
『おっ、シマヘビじゃん。1メートルぐらいあるんじゃね?』
動く二輪の無機物に乗った奴らは、チリンと音を立てて、こちらに向かって来た。
身の危険を感じ、素早く身体をくねらせて渡り切ろうとする。
刹那、背中に少しの違和感を感じたが無視して草むらに逃げ込んだ。
『ちっ。逃げちまったか!』
『お前、轢く気だったの?』
『ジョーダンだよ、ジョーダン』
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