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「ささ、どうぞ遠慮なさらずに」
アマガエルは黒い瞳でじっと私の目を見てくる。
私はもうこいつを食えない、と確信してしまった。
「そこまで言われると逆に食う気が失せる。それにお前みたいに小さな奴は食いごたえがなくてつまらん。さっさと行ってしまえ」
顔を近付けて口を大きく開けながら凄んだが、そいつからは怯えの色が消えていた。
「なんてお優しい方なんでしょう! 是非とも恩返しがしたいです。僕に出来る事がありましたら、何でも仰しゃってください!」
やはりおかしな奴だ。込み上げてくる笑いを押さえながら威圧的にアマガエルに答えた。
「ほう。そこまで言うのなら、お前の仲間が一番集まっている場所を案内してもらおうか」
「な、仲間を売るような事は出来ませんっ! 僕だけでしたら、全然構いませんけど!」
アマガエルはそう叫ぶと私の首元にピタッと飛び付き、よじ登ってきて必死に私の口の中に入ろうとした。
その反応が面白くて、今日は一日こいつで遊ぼうと思った。
小さな餌はまだ懸命に私の口を開けようとしている。
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