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「じ、じゃあどうすんだよ?」
ひとしきり叫んで、気が済んだのだろうか。
やっと静かになったソラが俺に焦りながら聞いた。
どうしようもないから、お前のところに来たんだが。
「どうするもこうす…」
俺が口を開いて答えようとしたとき、衝撃音と共に砂煙が周りに広がった。
くそっ、やっぱ来たか…。
「フィネス国特別政府機関AshWolf-灰狼-犯罪課第二班班長キサラ・トラストです」
砂煙が晴れるとともに現れたのは一人の女だった。
鮮やかな藍色の長い髪を靡かせたその女は、乗っていた魔力で動く、見た目はバイクのような航空型移動機械SY-2から降りる。
てか、よく噛まずにそれだけ言えたな。
毎回思うが、おまえらんとこの組織凄いよ。
「こちらで、第一級犯罪者No.008アスキー・クロークに酷似した魔力を感じたため、出動させて頂きました」
キサラ、という名の女は俺の顔写真付きの指名手配書を見せる。
久しぶり、縮む前の俺。
前はずっと一緒だったのにな…。
はぁ…、泣けてくる。
「それで…奴は、ってえ?」
やっとこちらに気付いたらしい。
キサラは驚いた顔をして俺を見つめ、指名手配書と睨めっこしている。
あ、言ってなかったが、こいつが砂煙たてているうちに魔力で髪と瞳の色を変えておいた。
俺オリジナル魔術で、属性を付与した魔力に付いている色を応用したものだ。
俺の属性は光、闇、雷、風、炎なので、髪には今とは正反対の光の魔力の色、白を使った。
瞳には同様に闇を使い黒にして、白髪黒眼になっているはずだ。
「やっほーキサラちゃん」
ソラが俺の肩に手を乗せ、後ろから顔を出してキサラに挨拶する。
どうやら知り合いのようだ。
ついでに言うとこいつ、ソラは犯罪紛いのことをしまくっているのだが、"ある大人の事情"により犯罪者ではない。
だから灰狼の奴らに追われはしない。
ずるいよな、こいつ。
「そ、ソラ様!!何故この様な所に!?」
ソラの声に顔を上げたキサラは顔を真っ青に染め、慌てて頭を下げた。
何だこの反応。
こいつ、灰狼に何したんだろうか。
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