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「…やっぱり覚えてないのかぁ」
シャロンが何か呟いたような気がしたが声が小さすぎて聞き取ることが出来なかった。
考えるそぶりを見せるシャロンは思い切ったようにいきなり真剣な面持ちになる。
「アスク、忘れたの?あれだけ一緒にいたのに」
今度ははっきり聞き取ることが出来た。
出来た、のだが全く意味が理解できない。
まるで昔から俺を知っているかのような言い方だ。
俺にはこいつと知り合いだったなんて記憶はない。
「お前は…何なんだ」
「君の"親友"だよ」
俺の問いにはにかんだ笑顔を見せたシャロンの声を聞いた瞬間、頭に鋭い痛みがはしった。
頭が割れるように痛い。
痛い
痛い
痛い
いた…い
「俺はお前なんか知らない…っ」
額からじわじわと染み出てくる汗の不快感なんか気にしていられない。
痛い…っ何なんだこれは…!!
足音でシャロンが近付いて来ているのがわかるがどうしようもなかった。
逃げようとも体がいうことを聞かない。
頭の痛みはまだ続いている。
一番近くまで来たのか足音が止まり、静寂に包まれた街の中でシャロンの最後の言葉が響くのを聞きながら俺は意識を無くした。
――――アスク、君は―…
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