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目が覚めると俺は一人倒れていた。
頭の痛みは嘘のように消えていて、あいつ――シャロンも消えていた。
立ち上がってみるといつもより目線が低いような気がした。
不思議に思い鏡を異空間から取り出し見てみると、そこには知らない少年がいる。
黒髪に金眼、俺と同じだ。
顔に触れてみると柔らかい確かな感触。
この少年は俺だ。
「は、はぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
◇◇◇
そして今に至る、訳だが…。
「ほんとこれからどうすんだよ…」
その場にへたれこみ頭を抱える。
…やっぱりあいつが原因なんだろうな。
首もとに付いていた魔術印も見たことないし…俺が知らないとなるとオリジナルか。
呪術である事は間違いないだろうけど。
解印術もありとあらゆるものを使ってみたが効果はなし。
国の禁忌指定されている古い文献や禁術も調べてみたが何も得ることはなかった(犯罪行為)。
「特に身体には異常はないようなんだけど…」
立ち上がったり走ったりなど体を動かしてもどこか痛むわけではない。
この一週間、日常生活的には困ったことはなかった。
まぁ、目線が変わったのには少し困ったが(階段から落ちそうになった…)、すぐ慣れることができた。
でも、やっぱこのまんまっていうのはな…?
「取り敢えず…あいつんとこ行くか」
俺は鏡の前から退き、服を着替える。
服は数枚その辺で買ってきた。
もともと持っていた服など着れるはずがなく。
シンプルな白いシャツに細い暗めの赤いリボン、黒いハーフパンツにブーツ。
最後に黒いフードつきベストを着て完成。
フードにネコミミが付いているのはスルーしてくれると嬉しい。
お、俺の趣味じゃないんだ!!
店員がはしゃぎながら持ってきたんだ…。
ほんとにあの店員は怖かった、魔物なんか目じゃないくらいに。
「展開」
言葉とともに足元に魔術陣が現れる。
複雑に文字や図形を組み合わされたそれは白く光り輝いていた。
「転移」
俺の合図にあわせ、眩い光が辺りを包み込む。
光が収まる頃にはもう、俺はそこには居なかった。
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