ゼロの物語

4/16
前へ
/318ページ
次へ
六月八日 朝 俺が学校に登校すると、既にキンヤが席についていた。 始業時間が8:45、現時刻が7:30。日直だから早く来ている俺よりも早い登校。 キンヤがこちらを向いた。 《どうした?》 「お前、学校に来るの早いな~って」 それを聞いてキンヤはペンを走らせる。 《この学校にどちらが早く来るか競ってる》 「誰とだ?」 《磯川》 「あぁ、磯川か」 磯川 クスミ 学級委員長。眼鏡をかけていて、正直カワイイとは言えない。 《磯山の良さがわからないとは、まだまだガキだな。彼女は十分に魅力的だ》 「お前の趣味が特殊なだけだと思う」 《それは気のせいだ》 俺は磯山の机を見て、まだ磯山が登校していないことを確認する。 「勝ってるみたいだな」 《あぁ、十四連勝中だ》 十四... 磯山、やる気ないだろ。 その時、 「今日こそは勝ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぅ!」 磯山が教室に現れた。 息を切らしながら、乱れた長い髪をかき上げ、教室の中を確認する。 《残念でした》 キンヤがスケッチブックに大きく書いて見せつけた。 「今日も負けたぅ...」 崩れ落ちる磯山。 メガネを外し、制服の胸元を緩め、衣服内の換気を行う。 「暑いぅ」 俺はそれを見て衝撃を受けた。 か、かわいい‥‥ 普段、ビン底眼鏡のインパクトが強すぎて気づかなかったが、整った顔をしている。 「アスカ君、どうかしたぅ?」 「いや、なんでもないけど」 《言っただろ?彼女は魅力的だって》 キンヤがさりげなく俺にスケッチブックを見せた。
/318ページ

最初のコメントを投稿しよう!

408人が本棚に入れています
本棚に追加