ゼロの物語

6/16
前へ
/318ページ
次へ
六月十二日 朝 ハクが学校に到着。 現時刻8:44分27秒 かなり遅刻ギリギリの登校。 ハクが学校に登校するのは、いつもこんな時間だ。 ハクは俺の隣の席に座る。 席替えは毎回、くじで行われるが、今回、念願の隣同士の席を得た。 「もう少し早く来いよ」 「いやだな、私は毎朝ニュースを欠かさず見ているだけさ」 情報社会では必須事項だぜ! とか言いながらハクは親指を立てた。 「じゃあ、今日の朝の要チェックニュースを教えてくれ」 先生が出席をとっているが、特に気にせず話を続ける。 「う~ん。近所で起こってる誘拐殺人とか?」 連続女児誘拐殺人事件 小学生から高校生の女子を狙い、人目につかないところで誘拐。しばらく監禁し、殺害。 「酷い事件だな」 「私なんかカワイイから狙われちゃうね」 「そしたら俺が守ってやるよ」 ハクは目を細め、俺を眺める。 そして、 「頼りないなぁ~」 「うるせー」 ハクは自分が呼名されたときは適当に返事をし、なんとなく落ち着きがない。 「えーと、その、あのね?」 「なんだよ、ハッキリ言えよ」 「‥‥た、頼りにしてるから」 ハクは机に突っ伏した。 俺はそれを見て思わず笑顔になる。 「それにしても、」 あの事件が起きたの、かなり遠い所だった気がする。 「ちゃんとニュース見てないじゃん」 身近な事件じゃないよ、なんて言いながら俺はハクの頭を撫でた。
/318ページ

最初のコメントを投稿しよう!

408人が本棚に入れています
本棚に追加