ゼロの物語

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六月二十一日 昼休み 《俺は、磯川に告白する。異論は?》 「ねぇよ。勝手にしろ」 《異論は?》 「ねぇよ。勝手にしろ」 《‥‥異論は?》 「お前、ビビってるだろ」 《当たり前だ。フラれたらイヤだもん》 キンヤは自分のこととなると幼児退行する。 いつもわかったような口をきくくせに。 《そんな俺にアドバイスを!!》 「んなもの、自分が伝えたい言葉を『ドーン!!』て言っちまえばいいんじゃね?」 《四年前からずっと好きでした!!》 俺は唖然した。 「‥‥それ、マジ?」 《嘘を言ってどうする》 お前は書いてるだけで、言ってないけどな。 つーか、この学校に入る前から? 《小学校のときの絵画コンクールの入賞者だったんだ。彼女が最優秀賞で、俺が優秀賞》 それが初対面だったが、一目惚れしたという。 《だから俺は明日、彼女に告白する!!》 「いいよぅ」 後ろから別の声がした。 「キンヤくんのこと、私も好きだしぅ」 磯川だった。 《ななななななななななななななんで磯川がここにいるんだ!?》 「ゴメン、私が呼んだ~」 ハクが教室の入り口から手を振った。 キンヤは口を開けたり閉じたりしている。 《ど、どこから聞いてた?》 「四年前から好きってところからぅ」 「いや~、クスミがキンヤのことが好きって言ってたからさ~」 ハクが笑顔でこちらに歩いてくる。 《で、いま磯川は何て言った!?》 「私も好きですぅ」 磯川は顔を赤らめてキンヤを覗く。 「カップル成立おめでと~う!!!!」 ハクが跳び跳ねると、教室中で聞き耳をたてていた他のクラスメートも歓声をあげた。 「それにしても、柿村も趣味が特殊だよなぁ。」 ナゲキが俺に言ってきた。 仲はいい方だが、何故かキンヤを苗字で呼ぶ。 俺はニヤリと笑った。 「それがな、磯川は眼鏡を外すとかなり美人なんだ」 「なんだよ、そのベタな設定。」 「マジなんだよ、これが」
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