11月11日

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康志は突き立てられたナイフの柄に自分の指紋を付けるように右手でにぎる。 「お兄ちゃん、なにしてるの…」 「これは僕がやったことにする…」 「…どうして?私がやったんだよ。」 「…心配なんだ。君のことが…」 「だからって…」 康志は子羽をやさしく抱き寄せた。 「もう何もいわなくていい…子羽ちゃんは心配しなくていいんだ。」 「お兄ちゃん…」 しばらくの間二人は抱き合っていた。 場を沈黙が支配する。 「子羽ちゃん…君が警察に電話するんだ。」 「お兄ちゃん…」 康志は子羽を突き放す。 「早くするんだ。」 子羽の目を見つめながら言う。 「でも…」 「いいから…僕の言うことを聞いてくれ。」 「…わかった…」 子羽は自分のケイタイを取り出した。 震える手で110番に連絡する。 「もしもし…家で人が刺されたんです…はい…はい…死んでいます…」 子羽はうろたえながらも気丈に受け答えする。 康志は倒れた洋介を見つめながら片膝をつき何かを考えているようだった。
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