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「私ね…あの日を境に夢を見るようになったんだ。」
「…どんな?」
「康ちゃんがね…子羽をかばって洋介君に首を締められてるの。」
「…」
「子羽も私も止めてって叫ぶんだけど洋介君は馬乗りになったまま止めてくれないんだ。」
「…」
「それで私がね、右手に包丁を握ってね…洋介君を背中から刺すんだ…」
「…」
「そこで目が覚めるの…毎日毎日…」
「…」
「ねぇ康ちゃん…私にだけはホントの事言ってくれないの?」
「…」
「康ちゃん…」
一葉は下にうつむく。
「あの日…私も一緒に行けば良かった。」
一葉は嗚咽を漏らして泣いた。
化粧化のない顔が赤く染まっていく。
それを見ながら康志もじっと前を向いたまま涙を流した。
いままで溜めていた物が後から後から涙となって流れ出す。
康志は唇を噛み締めながら嗚咽しそうになるのを必死に我慢していた。
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