11月12日、命日。

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しばらくの間二人は泣いていた。 康志は目を閉じ落ち着くようにゆっくりと呼吸をする。 感情が石になればと願う。 康志の涙は止まったが一葉は下をむいたまま泣き続けた。 「…一葉。」 康志はそんな一葉にやさしく声をかけた。 「…何。」 一葉は顔を上げる。 「今までありがとな。僕が一葉と会えるのは今日だけだ…これだけは伝えたかったんだ。」 「康ちゃん?」 「遺言だよ。君への。」 「…駄目だよ。変なこと考えちゃ…康ちゃんがいなくなったら私生きていけないんだからね…」 「…一葉は強いから…僕がいなくなっても平気だろ?」 「約束したじゃない!私より先には死なない。独りにしないって…」 「…ごめんな。一葉…」 康志は一葉の顔を見れずに下を向いた。 「やだよ、康ちゃん。やだよ…」 一葉は仕切られたガラスを両手でたたいた。 後ろのドアから警官が入ってきて一葉を引き離す。 「康ちゃん…康ちゃん!…」 一葉は引きずられるように部屋から連れ出される。 それを見ないように康志は下を向いていた。
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