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康志は再び腰紐を結ばれると、今きた廊下を歩いていった。
まるで憑き物でも落ちた様に康志の顔はすっきりしている。
目を閉じれば瞼の裏に先ほどの一葉の顔が浮かんでは消えていった。
康志は独房に入れられる。
しばらくすると机に向かって座っている康志の横に誰かが立っていた。
血の気のない顔はじっと康志をみつめている。
「…何考えてんだよ。」
その人らしきモノが康志にかたりかける。
「あんたはあの日こうなる事を望んだ形になったんだ…今さら怯えてんじゃねえよ。」
「…違う、僕は…」
「違わねえさ。あんたは一葉さんを見て死ぬことが怖くなったんだろ?俺を見殺してまで子羽を守りたかったんじゃなかったのか?」
「…」
「とにかくケジメだけはつけて貰うからな…」
康志はフラフラと立ち上がる。着ていた上着を脱ぐとクルクルと紐のようにしていく。
それを鉄格子にかけると輪っかにした。
「一葉…ごめんな…」
康志は輪っかの中に頭を入れて、体重を預けた。
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