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康志の墓の前に一葉と子羽が立っていた。
二人は黒い喪服に身をつつみ手には白い菊の花をもっていた。
「一年ぶりだね…康ちゃん。」
墓の前で一葉は呟いた。
菊の花を墓前に捧げると二人で手をあわす。
しばらくの間一人一人近況を報告しあうように目をつぶっていた。
「お姉ちゃん…あのね…」
子羽が手を合わせながら口を開いた。
「…あの日…私ね。」
口を開こうとした子羽を一葉が制した。
「…いいの…いいのよ子羽。」
二人の間に沈黙が流れる。
「康ちゃんが子羽を守ってくれた。その事実だけで今はいいの…」
一葉は凛とした表情で康志の墓をじっと見つめていた。
「お姉ちゃん…」
子羽は空を見つめながら呟いた。
あれから一年の歳月がすぎていた。
二人は色んな事を背負いながら生きていた。
生きる意味を探しながら…
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