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康志は車のトランクから荷物を降ろしている。 一葉も後部座席から途中買ってきた手みやげを小脇にかかえた。 旅行鞄を持ちながら康志は玄関の扉に手をかけた。 ガラガラガラと引き戸が開く。 鍵はかかっていなかった。 「ただいまー」 康志は家中に聞こえる様に少し大きめの声で帰宅を告げた。 廊下はシンとしていた。 もう一度呼びかけようとした時に廊下の突き当たりにある居間の襖が静かに開いた。 暗い廊下を歩いて来たのは康志の義理の姉の花『はな』だった。 康志の隣にいた一葉は少し驚いて頭を下げる。 「お姉さんご無沙汰しています。」 「遠い所ご苦労様でしたねー。まあおあがりやす。」 「なんでお姉さんここにいてはるんですか?」 「…」 康志の問いかけに聞こえなかったのか花は答えなかった。 すると突然奥の居間から声が聞こえた。 「おー。ようきたな。まあ上がれ。」 声の主は康志の兄の一郎『いちろう』だった。 康志は玄関を上がりながら首を傾げて、 「なんで兄貴達もおるんや?」 と再び問いかける。 「俺らも母さんに呼ばれたんや。帰ってきてほしいゆうてな。」 康志と一葉が居間へと進んでいくと一郎と康志の母の早苗『さなえ』がちゃぶ台の周りに座っていた。
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