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まだ太陽はギラギラと輝いていた。
康志(こうし)は外気温との違いに汗を拭きながら郊外にある家への電車に揺られていく。
一駅一駅過ぎる度に他の疲れたサラリーマンたちは外の厳しい暑さの中に消えていく。
すっかり汗も引いた康志は目の前に空いた席に腰掛けた。
「はー…」
と溜め息をついてポケットの中のケイタイを取り出す。
今日はいつもより帰宅する時間が早いため妻の一葉にメールを送る為だった。
『今○○駅過ぎたから7時には帰ります』
メールを打ち終わってケイタイをしまおうとするとすぐに返信のバイブ音が鳴った。
返信の速さに少しとまどいながらメールを確認する。
『お疲れ様〓早かったね。気をつけて帰って来てね💓』
康志はメールを確認しながら少し微笑んでいた自分に気付き慌てて周りに目を配った。
数人しか乗っていない車内のサラリーマンたちは皆同様に疲れた表情をして康志の事など気にも止めていなかった。
もうすぐ電車は康志の降りる駅に着く。
車内はやっと落ちてきた太陽で赤く輝きクッキリとした影が長く照らし出されていた。
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